2024.11.25
どうか、結婚、妊娠・出産の希望を諦めないでください。関節リウマチを罹患していても妊娠し、健康な赤ちゃんに恵まれる方はたくさんいます。
健康な方と比較すると早めに医師に相談をしてください。なぜなら事前に治療を含めた出産計画を進めていく必要があるからです。
ご受診された際に、以下を含めたご説明を行います。
- 現在のリウマチ状況・状態について
- 治療の必要性について
- 出産を望まれるか否かの時期について
関節リウマチが進行してしまっている場合、赤ちゃんや母体に問題なく妊娠・出産ができた場合であっても、強い痛みや変形した手・肘では赤ちゃんを抱き上げる、抱きかかえ続けることが難しくなってきます。
病気をコントロールして妊娠することができて、出産後の育児もしっかり行える状態を想定し、目指すことが大切です。そのために医師とコミュニケーションをしっかりととりましょう。
妊娠・出産において関節リウマチの症状の変化について
妊娠中の関節リウマチの症状の変化について
一般的に、関節リウマチの患者様が妊娠した場合、よくない状態が出ていることが多いと言われています。関節リウマチ患者様で妊娠をされた方を対象としたある調査では、リウマチ症状が改善した方の割合が、妊娠3ヶ月:約半数5割程度、妊娠後期:6割程度、妊娠期全体:2割程度の患者様のリウマチ症状が悪化したという報告があります。
出産の関節リウマチの症状の変化について
妊娠中は関節リウマチ症状の改善が続く割合が高いのですが、出産後は、半年~1年程度で9割の患者様が関節リウマチの症状が、妊娠前の状態、または悪化になることが多くあります。これは妊娠中に免疫抑制物質が増加していましたが、出産後には減少し、授乳時に分泌されるホルモンの影響と言われており、医師からは授乳期間を短くすることを提案する場合もあります。
安心してください!関節リウマチは遺伝性の病気ではありません!!
妊娠を望まれていらっしゃる関節リウマチの患者様の中には、お子様に病気が遺伝してしまうのではないかとご不安に思われ、診療の際に、とても心配されていらっしゃるご様子を伺います。関節リウマチは遺伝性の高い病気ではありません。
では、お子様に遺伝する確率はどのくらいなのでしょうか?自己免疫疾患の遺伝しやすさは、世界的には一般集団における発症にくらべ10~20倍程度といわれており、我が国においては、正確な資料はございませんが約20人に1人程度(5%程度)と推察されています。
母親がリウマチ患者様の場合に、子どもがリウマチになる確率は上がりますが、関節リウマチにならないことの方が圧倒的に多いと思ってください。但し、生まれたお子様が痛みやこわばりなど、何らかの症状が出た場合には、直ぐに当院にご受診してください。
関節リウマチは、高血圧や膠原病、アレルギー疾患などと同様で、遺伝的要素だけでなく、体質的要素、環境的な因子が合わさり、発症する病気です。どうか、ご自身を責めずに、前向きに対応しましょう。もちろん、医師も二人三脚で患者様を応援して参ります。
妊娠中・出産後(授乳中)の患者様は薬の扱いにご注意ください!!
前述したように、一般的に、関節リウマチの患者様では、妊娠中では、半数以上の方においてリウマチ症状改善するため、妊娠時には、全ての薬を中止します。しかし、リウマチ症状が辛いなどで、どうしても薬を必要とする際には、以下の薬のメリット・デメリットを診療の際にお伝えした上で使用していただきます。
FDA分類:B | 抗リウマチ薬 | アザルフィジン |
---|---|---|
生物学的製剤 | エンブレル | |
シムジア |
※FDA分類:
米国食品医薬品局(FDA)による「薬剤胎児危険度分類基準」のことで、胎児に対する薬の危険度を示す評価基準です。A、B、C、D、Xの5段階カテゴリーからなっている危険度に順じた分類(A:ほぼ安全~X:絶対禁忌)
※分類B:
「ヒトでの危険性の証拠はない」とされています。関節リウマチ治療にでは、100%の安全性が証明された薬は存在しませんが、患者様の症状により、メリット・デメリットを考慮し、患者様にご納得いただいた上でのみ、短期間、最低用量で処方します。尚、ステロイドは、プレドニゾロン(PSL)15mg以下の服用は影響が少ないとされています。
そもそも、関節リウマチの薬を服用している患者様が気付かぬうちに妊娠された場合を考えますと、ご結婚前提の段階から医師にご相談いただき、患者様ご自身のお身体を上手にコントロールすることがとても大切です。
関節リウマチ症状で、当院にご診療の際には、ご不安なことなど何でもご相談ください。